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【ゲームデザイン】『セナとペグと不思議な塔』ステージデザインの裏側 – グラップルアクションを活かす動線設計

皆さんこんにちは。ゲームデザイン課の山田です。
弊社オリジナルタイトル『セナとペグと不思議な塔』のゲームデザインを担当しております。

本作は2Dアクションとグラップル移動を組み合わせたアクションゲームです。プレイヤーはペグというキャラクターを操作し、高い塔を登っていきます。現在、Steamストアで体験版を公開中の開発中タイトルです。
本記事では、体験版に収録されているステージ設計の意図と、その裏側についてご紹介します。

本作の核となる『グラップルアクション』は、特定のグラップルオブジェクトにワイヤーを射出し、キャラクターを引き寄せることによって空間を高速移動するアクションです。
入力方向やタイミングによって挙動が変化するため自由度が高い一方、プレイヤーの意図と挙動がズレやすいという設計上の難しさも持っています。

皆さんは、ゲームをプレイするときに「ここはもう少し快適に動けたらいいな」と思ったことはありませんか?

私もプレイヤーとしてそう感じることがあり、『セナとペグと不思議な塔』の開発中はステージ作りに夢中で、グラップルアクションが気持ちよく感じられるか、あれこれ試していました。つい自宅でもステージを思い出し、「ここをこうしたらもっと面白くなるかな」と考えてしまうこともありました。

私はステージ設計をしながら、常にその視点で自分の作ったステージの空間をチェックしていました。
プレイヤーが操作を迷わず、なおかつ挑戦の緊張感も感じられる体験をどう作るか──そんなことを毎日考えながら調整していました。

今回は、そんな試行錯誤の中で得たステージ設計の工夫や考え方を、開発者視点で紹介していきます。
技術的な背景も交えつつ、ゲームデザイナーとして意識したポイントや、プレイヤー体験をどう形にしたかをお伝えできればと思います。

【ステージデザインの目的と挑戦 – グラップルアクションを最大限に活かす】

『セナとペグと不思議な塔』のステージデザインにおいて、最も重視したのは本作の核となるグラップルアクションを、プレイヤーが直感的かつ気持ちよく使い続けられる体験を作ることでした。グラップルは自由度が高い反面、次に何をすればよいのか分かりにくく、失敗の原因も把握しにくいという課題があります。そのため、単なる移動手段として成立させるのではなく、ステージそのものが自然に操作を誘導し、プレイヤーが「こう使えば気持ちいい」と感じられる体験を設計する必要がありました。

体験版では3つのステージを用意しており、それぞれ『初期ステージ』『発展ステージ』『達成ステージ』として、プレイヤーが段階的に操作を学び、挑戦を楽しめるよう設計しています。
以下では、各ステージの役割と設計意図を詳しく解説していきます。

制作したステージでは、空間構造や足場の配置、視線誘導などを工夫しました。

  • 初期ステージ:操作を覚え、安心して試せる構造
  • 発展ステージ:応用アクションでリズム感を楽しむ構造
  • 達成ステージ:これまでの集大成として達成感を味わう構造

こうした設計により、プレイヤーは自然とグラップルを試し、成功体験を積み重ねながらステージを進むことができます。

また、ゲームデザイナーとして意図を形にする過程では、実装制約やプログラマーとの調整も欠かせませんでした。ギミックの反応速度や判定範囲は、プレイヤー体験を直接左右するため、設計と実装を何度もすり合わせながら最適化しました。本記事では、こうしたステージ設計の意図と技術的背景をあわせて紹介し、ゲームデザイナー視点での試行錯誤や学びを整理します。アクションゲーム制作に携わる方にとって、参考になる情報を届けられれば幸いです。

【序盤から終盤までのステージ設計の流れ】

初期ステージ:操作習得と安心感の設計

初期ステージでは、プレイヤーがグラップルアクションの基本操作を自然に覚えられる体験を最優先に設計しました。グラップルは自由度が高く、一見簡単に見えても、次にどこに飛べばよいのか分かりにくく、失敗の原因も把握しづらい特徴があります。そのため、初期ステージでは、ステージそのものがプレイヤーを操作に導き、安心して試せる体験を提供することを意識しました。

具体的には、足場の配置や距離感に余裕を持たせ、最初のジャンプやグラップルで届く範囲は確実に成功するようにしています。ジャンプの高さは入力時間の長さによって変化させる仕様も検討しました。しかし社内のテストプレイでは、「入力時間による差が分かりにくい」という意見が多く、意図しない失敗が発生していました。そこで成功体験の安定を優先し、入力時点で最大到達点に達する仕様へ微調整しました。これにより操作のブレを抑え、『届く距離感』を直感的に学習できるようにしています。
さらに、落下してもリカバリーできる安全地帯を設け、失敗してもストレスを感じにくい構造にしました。これにより、プレイヤーは安心して操作を試しながら成功体験を積むことができます。

また、視線誘導も工夫しました。目線に沿った足場や障害物の配置で、自然に「次はここに飛ぼう」と理解できるようにしています。初期ステージの段階で操作の感覚をつかむことで、次の発展ステージで応用ギミックや連続アクションにスムーズに移行できます。

さらに、複雑なギミックは控え、基本操作の繰り返しを重視しました。こうしてプレイヤーは操作に慣れながら達成感を味わい、次のステージへの意欲を自然に高められます。設計の意図は、『学びながら楽しむ体験』を確実に提供することでした。

発展ステージ:応用ギミックとリズム感の演出

発展ステージでは、初期ステージで学んだ基本操作を応用してもらうことを意識しました。プレイヤーはすでにグラップルの感覚をつかんでいるため、少し挑戦的なギミックや連続アクションを配置し、操作の楽しさと達成感を両立させる設計を心がけました。

具体的には、複数のギミックを連続して配置して、リズムよくステージを進める動線を作りました。グラップルだけで進むのではなく、ジャンプも適度に挟むことで、移動のスピードに緩急をつけています。こうすることで、プレイヤーは「次はどの順番で飛べばいいかな」と自然に判断しながら、テンポよく攻略できます。さらに、落ちてもすぐにリカバリーできるルートや安全地帯を用意して、緊張感と安心感のバランスも意識しました。

さらに、視線誘導も発展ステージ向けにおこないました。プレイヤーが自然に連続ギミックのルートを把握できるように設計し、操作ミスによるフラストレーションを最小限に抑えています。こうした工夫により、プレイヤーは次に取るべき行動を迷うことなく判断でき、グラップルを連続して成功させるリズム感のある攻略体験が生まれます。

発展ステージの設計意図は、『初期ステージで身につけた操作をさらに楽しめる環境を提供すること』と『リズム感と挑戦のある体験でプレイヤーの満足度を高めること』です。これにより、最後の達成ステージに向けて、プレイヤーの成長と期待感を自然に引き上げる導線が完成します。

達成ステージ:高度アクションと満足感の提供

達成ステージでは、プレイヤーが発展ステージで習得した応用アクションを駆使し、ステージ全体を通して達成感を味わえる体験を提供することを目標に設計しました。最終盤に向けて、高度なアクションを配置し、プレイヤーの操作スキルを最大限に活かせる構造にしています。

具体的には、グラップルを連続で使うような仕掛けを作って、思わず「よし、届くかな」とワクワクするような動線にしました。同時に、プレイヤーが失敗してもリカバリーできるルートを適度に設け、理不尽な難易度にならないよう配慮しています。このバランスにより、挑戦の緊張感と成功の喜びが両立する体験を演出できます。

また、視線誘導や環境デザインも、最終的な『達成感』に直結するよう調整しました。ゴールへの導線を自然に示すことで、プレイヤーがステージの先の行き先を直感的に判断できるようにしています。こうした設計により、操作感覚の総仕上げとしての達成体験が生まれ、ゲーム全体を通した満足感を高めることができます。

達成ステージの設計意図は、『これまで習得した操作を最大限に楽しませること』と『ステージ全体を通してプレイヤーに達成感と成長の実感を提供すること』です。初期ステージ、発展ステージで培ったスキルを総合的に活かすことで、プレイヤーがゲームの締めくくりとして満足できる体験を提供しています。

【設計の壁とプログラマーとのすり合わせ】

ステージ設計を進める中で、設計意図と実装の間に生じるズレは、避けて通れない課題でした。特にグラップルアクションは、判定や挙動がプレイヤー体験に直結するため、設計段階で想定していた動線が、そのまま再現できないケースが多くありました。

その一例が、グラップルの吸着判定の仕様です。
当初は操作の自由度を高めるため、キャラクターの前方だけでなく後方にもわずかに吸着判定を設け、最も近いオブジェクトに吸着する仕様にしていました。

しかし実際に自分で繰り返しプレイしてみると問題が発生しました。
前方に飛ぼうとしているにもかかわらず、背後のオブジェクトに吸着し、意図せず後ろに引っ張られてしまう場面があったのです。
プレイヤーから見ると「なぜ今そっちに飛ぶのか分からない」という違和感につながっていました。

そこで、操作感をより直感的にするため、プログラマーには以下の依頼をしました。

  1. キャラクターの向きに応じて吸着対象を優先的に判定できるようにする
  2. 後方の吸着範囲をゲームデザイナー側で調整できるパラメータを追加する

これにより、入力意図と挙動のズレが大きく減り、プレイヤーは狙った方向に正確に飛べるようになりました。
さらに、後方吸着範囲を微調整できるようになったことで、リカバリーの幅を保ちつつ挑戦感を演出でき、よりストレスの少ない操作体験を提供できるようになりました。

こうした問題を、単純に足場の位置調整だけで解決することはできませんでした。アクションの気持ちよさや達成感が損なわれてしまうためです。
そのため、ステージ側の調整と並行して、プログラマーと密にコミュニケーションを取りながら、ギミックの反応速度や判定範囲、入力受付の猶予などを細かく確認していきました。

また、テストプレイを通じて、想定していなかったルートや挙動が発生することも少なくありませんでした。これらをすべて制限するのではなく、ゲーム体験として面白さにつながるものはあえて許容し、問題が生じる部分のみを調整する判断も求められました。設計意図を守ることと、実際のプレイヤー体験を尊重することのバランスを取る作業は、想像以上に難しいものでした。

最終的に強く感じたのは、ステージデザインと実装は切り離せるものではなく、互いに影響し合いながら形作られるということです。理想の設計をそのまま押し通すのではなく、『プレイヤーにどのような体験をしてほしいか』という本質を軸に、制約の中で最適解を探る姿勢が重要だと学びました。このすり合わせの経験は、ゲームデザイナーとしての視野を広げる大きな学びとなりました。

【ゲームデザイナー視点で得たステージ設計の知見】

今回のステージ設計を通して強く感じたのは、アクションの魅力は操作そのものだけでなく、それをどう使わせるかという環境設計によって大きく左右されるという点です。特にグラップルのような自由度の高いアクションでは、動線や足場配置、失敗時のリカバリーといった要素が、体験の快適さや達成感に直結します。

また、設計意図を形にする過程では、技術的制約や実装上の判断を避けて通ることはできませんでした。その中で重要だったのは、設計を守ること自体を目的にするのではなく、「プレイヤーにどのような体験を届けたいか」を常に基準に判断する姿勢でした。プログラマーとのすり合わせやテストプレイを重ねることで、設計と実装の間に最適な落としどころを見つけられたと感じています。

本記事で紹介した考え方や試行錯誤が、アクションゲームやステージデザインに携わる方にとって、設計を見直すきっかけやヒントになれば幸いです。

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